相変 わらず美しい音色の音楽と、良い香りが流れ漂ってまいります。
「はぁ~、さっきの世界に流れて来ていたのは、この世界から流れて来ていたのかも知れない。」ふっと、そう思いました。
それにしては、先程のメロディーと香りも、少し違うようにも思えました。
今漂っている香りもやはり、良い香りに変わりはないのですが何か、その中に男性的なものを感じさせます。
そう思いながら見ると、又これビックリ!何時来たのでしょうか。私の前に逞しげな二人の男性が立っているのです。
そして二人が、「さあ 、こちらにどうぞ」と言うようなポーズを示すのです。
何と言う美しくも凛々しい顔立ち、形の良い男性的な眉毛、切れ長で涼しげな目・鼻立・口元…。何ひとつとっても言い分はありません。
髪は黒髪で艶々しており、姿・スタイルも素晴らしく、何から何まで良く整った、こんな素晴らしい男性も見た事がありません。
「一体これはどうなっているのだろうか。」
人間界では、いくら男性が美容院に通う時代になったからと言いましても到底比べられません。それは皆、自分達の心が作り出して行くものなのでしょう。
私くしは、その光り輝く庭園の中を、その二人の男性に案内されて歩いて行きましたが、歩くと言うよりも、むしろ地面の上を擦れ擦れに足が浮いていると言った感じで、あまり足が下に着いている感じがしないのです。
私くしは今、地面と言いましたが、それも光っていて良く分からないのです。
「どうやら宮殿の方向に向かっているようだ。」と思った時、もうすでに私くしは、その宮殿の中に居るのです。
何と又、これが凄い。幅二十メートルぐらいの中廊下とでも言いますか、それが見渡す限り続いておりました。そしてその天井と言い、何と言い、すべてに素晴らしい装飾が施されており、それが全部宝石ででも出来ているかのように光り輝いているのです。
廊下を囲んで出来ている両側の庭園には、池などがあり、水は輝き、植え込みには色とりどりの花も咲いていて、これ又、綺麗な実がなっているのも見えました。それが見渡す限り続いているのです。
もっと驚く事は、その真ん中を二人の男性に案内されて歩いて行く私くしの両側を、美しい天女達が膝をつき、見渡す限りに二列に並んで座っておりました。
そして手に手に三方を持ち、私くしが前を通って行くと、静かに順々に膝を立てて、私くしの前に三方を差し出すのです。その上には見るも目映いくらいの宝物が乗っており、それが何と言う物なのか…、それは輝き、まぶしくて良く分かりません。
とにかく素晴らしい物だと言うしか言葉には表わす事は出来ません。
やがて私くしは、ひとつの大広間とでも言うような所に案内されたのですが、又ビックリで「凄い!」の一言です。
何万畳敷もあろうかと思われる大広間は、すべてが金銀・宝石で出来ているかと思う程に光り輝いているのです。遥か上の方からとでも言いましょうか、天井があるのか、ないのか、良く分かりません。
とにかく大広間の上の方から白金の光りが目映いばかりに広場一杯に差し込んで来ているのです。その中央と思われる所に、一段高くなっている場所が有り、そこに素晴らしい席が設けられておりました。
私くしは二人の男性にそこまで案内されると、二人の男性は丁寧に挨拶をして、いなくなってしまいました。
そして、それと入れ替わりに十何人かの天女が現れ、私くしの周りの席に静かに座りました。その中の四人が私くしを挟んだ両側の席に二人ずつ腰を掛けて座り、他の天女達は私くしの後ろの方に行儀良く正座して座りました。